2008年4月23日水曜日

ソロー・モデルを勉強する意味①

皆さん、4月22日の授業は理解できましたか?まだ途中ですが、随分と数式が出てきて、数式に慣れない学生さんには苦痛だったかもしれません。

しかし、前期の授業では、このセクションが一番数式がたくさん出てくるので、これを乗り越えれば、あとは楽になりますので、ご安心を。

最近のマクロ経済学の教科書をみると、成長理論の章のところでもソロー・モデルに触れずに全く数式が出てこない本もあります。しかし、近代経済学の醍醐味は複雑な現実を抽象化して、そのメカニズムを探るところにあるので、是非頑張って勉強してみてください。

私の大学院時代は、まさにこのソロー・モデルの結論が現実に妥当するのか、多くの学者が実際のデータを使って検証していた時代でした。皆の知的興奮が伝わるような一時期で、このような時に大学院生として勉強できたことは幸せなことだと思っています。

2008年4月15日火曜日

ハロッド=ドーマー・モデルとファイナンシャル・ギャップ・モデル

皆さん 今回の授業の内容はいかがだったでしょうか?よくわかりましたか?

今から20年ほど前に、私が日本輸出入銀行(現在の国際協力銀行)で、世界銀行のチリ向け構造調整融資(Sutructural Adjustment loan, SAL)との協調融資を担当した時に知ったのが、このファイナンシャル・ギャップ・モデルです。

いまから思えば、こんな単純なモデルで途上国への融資必要額が計算できるのか?と思いますが、当時は「経済学って使えるな」と単純に感心したものです。

イースタリーの本を読むと、未だに使っているようです。彼はそのことについて激しく批判しているので、ぜひ『エコノミスト 南の貧困と闘う』を読んでみてください。

2008年4月10日木曜日

援助供与国に援助するということ

2008年4月9日の日経新聞に「アフリカ諸国と経済協力を拡大 インド「サミット」開催」という記事がありました。内容はインド政府がニューデリーにアフリカ各国の首脳などを招き「サミット」を開催した、というものです。

その背景には、アフリカにおいて資源開発で先行する中国に対抗することがあるらしく、インドのシン首相は「サミット」の場で、アフリカへ今後5年間で54億ドルの信用供与を行うことを表明したらしいです。

中国が資源確保のためにアフリカへ経済協力を行っているのは最近ニュースでも良く見ますから、インドが同じことを考えるのもわからなくはありません。しかし、問題はインドも中国も日本の援助供与国としてトップ10に入る国だということです。

日経新聞の2007年10月11日「政界なんでもランキング ODA供与先、多様に」という記事で、OECDのデータをもとに外務省が作成した2005年の日本のODA供与先ランキングが出ていますが、中国は2位で、インドは10位です。

我々の税金をもとに日本が援助している国が、他の国に援助しているのは、エッ?っていう感じですよね。そんな他の国に援助するお金がある国に、日本が援助するのはおかしいだろう、っていうことです。

「ODA供与先」の記事に書いてありましたが、さすがに中国への新規円借款は2008年度から打ち切るそうです。日本政府はインドについてはどうするのでしょうか? 皆さんはどう思われますか?

2008年4月8日火曜日

第1回授業のまとめ

履修生の皆さん、本日第1回目の授業の復習をしたいと思います。今日はRoslingさんとUNDPが一緒に作ったHuman Development Trends 2005のソフトを使って、世界経済の現状について勉強しました。

授業中に全ての内容は紹介できなかったので、是非自分でもこのソフトを使って勉強してみてください。実際、このソフトは自分で操作した方が感動します。

今日授業でやった中で、皆さんに最低限憶えておいてもらいたいことは、以下の3点です。
①2000年の時点で地球上60億人中、12億人の人が1日1ドル以下で暮らしている。
②1975年時点ではアフリカよりも東アジアの方が貧しかった。
③途上国内の所得格差は激しくて、例えばナミビアではもっとも豊かな20%の人々は日本より少し劣る所得水準(実質一人当たりGDP23,000ドル)であるが、最も貧しい20%はシエラレオネとおなじ所得(同409ドル)である。

もちろん、これ以外にもいろいろ重要なことはありますので、ソフトを動かして自ら勉強してみてください。

また、ミレニアム開発目標は世界的な目標なので、グローバル化時代の若者として、その存在といくつかの内容については把握しておいてください。

2008年4月4日金曜日

ODAは金額が問題なのか?

本日(2008年4月4日)の日経朝刊に「ODA3割削減、5位転落」という記事が出ていました。OECDがまとめた数値(暫定ですが)によれば、日本の2007年の政府開発援助(ODA)実績が、先進国中5位に転落したとのことです。日本は1990年から2000年までODA実績世界1位であったことを考えると、ずいぶんと後退したわけです。

もっと深刻なのは、「貢献度指数」というODAの支出純額を国民総所得(GNI)で割った指標が0.17%となり、ギリシアより低い20位となっていることです。国連では2015年までに、この指標を0.7%とする目標を掲げています。先進国は、この目標を達成しようと努力しています。日本だけが、国内の財政赤字を理由に、この先進国グループの行動から別行動をとっているわけです。

日本も先進国の一員として、0.7%の目標は達成しなければいけないでしょう(そうでなければ、G8サミットやTICADで誰も日本の話を聞いてくれないと思います)。

しかし、それと同時に(それよりも)重要なのは、出している金額だけでなく、ODAの効果を正しく評価することだと思います。いま、経済学の研究分野では援助の効果について、否定的な結論をだす論文がいくつも公表されています。

個人的には、全ての援助が無効であったとは思いません。良い援助と悪い援助があったのだとおもいます。各国政府および研究者は、どのような援助が失敗する確率が高く、どのような援助は成功する確率が高いか、科学的に研究し報告する義務があると思います。私も微力ながら、努力するつもりです。

ODAは皆さんの税金から支払われています。是非、皆さんも考えてみてください。