2008年10月17日金曜日

後期は貿易の問題を中心に

9月24日から後期授業が始まりました。今学期の「開発経済論」は貿易問題を中心に行います。といっても既に本日が10月16日なので、授業は3回行いました。今週、先週とリカード・モデルを皆さんに紹介しました。皆さん、理解できたでしょうか?

期末試験には必ず出しますから、よく勉強しておいてください。

リカード・モデルは貿易理論の基礎の基礎です。WTOはもちろんIMFや世界銀行の貿易に対する考え方にも強く影響を与えているモデルなので、これを知らないと「開発問題」を考えることができません。

授業でもお話ししましたが、リカード・モデル自身はモデルとして良くできており、私も大学時代に勉強したとき「へーっ、そうなんだ!」と感心しました。しかし、後年いろいろと考えてみると、現実社会では不適切な使い方をされているようです。この辺は授業でもお話ししていくつもりです。

東アジアや中国などをみても経済発展している途上国は殆ど輸出(特に製造業品の輸出)が急激に伸びています。逆にいえば、製造業品の輸出ができないようであれば、経済発展できないのかもしれません。貿易問題の重要性がよくわかりますね。

後期、頑張って勉強しましよう。

P.S. 昨日、駒澤大学の井上先生の「学術論文を執筆する上での著作権講座」がありました。出所明示義務違反には刑事罰として30万円以下の罰金が科せられるそうです。授業のレポートもこの対象ですからコピペは絶対にやめましょう。

2008年8月28日木曜日

クマシで私も考えた

7月18日の「2008年前期を終えて」のところでも、ちょこっと紹介しましたが、7月にガーナに行ってきました。アフリカは、今回で3カ国目(ケニア、ボツワナ、ガーナの順、チュニジアも行きましたが、ちょっと同じグループに入れられないと思うのではずします)でしたが、今までで最もリアルなアフリカに触れたような気がします。

その理由は、①陸路を6時間近くかけて目的地に行った、②首都ではない、地方都市に行った、③製造業の現場を見た、の3つです。

以前、マレーシアも2回に分けて縦断し、そのときもプラスチック産業の中小企業を見て回りましたが、あの調査でマレーシアの現実がよくわかったと思います。

陸路を何時間もかけて行くと、村や小さな地方都市を通ったりして、人々の暮らしを垣間見れます。また、首都はどこにいっても比較的似たような感じですが、田舎は結構それぞれ違って面白いです。また、製造業の現場を見ると、その国の発展レベルが一番よくわかる感じがします。

で、ガーナのクマシというアシャンテ王朝の古都に行ったわけですが、一番の感想は「アジアとあんまり変わらないな」というもので、人々のビジネスへの熱意だったり、商売の活気だったり、というものはアジアとあまり変わらない気がしました(あくまで印象ですが)。

ただ違うのは、インフラのような気がします。クマシのSuame Magazineという金物加工の町工場が集積しているところでも、自然発生的に工場が集積していますが、下水や道路や区画整理がもっとよく提供されていれば、もっと発展するのではないかと思いました。

よく考えてみれば、マレーシアも30年前はこんな感じだったのかもしれません。インフラを提供することで、アフリカも今日のアジアのようになるということは十分に考えられますね。

2008年7月27日日曜日

課題レポートの採点を終わって:コピペについて

ようやくレポートの採点を終わりました。そこで、考えさせられたことを皆さんにお伝えします。

昨年度まで、私の担当科目はマクロ経済学とゲーム理論入門だったので、レポートの提出を学生諸君に求めなかったのでわからなかったですが、今回初めて皆さんにレポートを課したことで、改めて「コピペ(コピー&ペースト)」が多いことを実感しました。

レポートの採点を始めて、最初の10本くらいに「コピペ」が特に多く、中には初めから最後まで「コピペ」というのがあり、「人を馬鹿にしているのか!」と怒り心頭でした。(武蔵大生の評価のために付け加えておくと、私自身が興味深く読める良くできた論文もいくつもありました。)

しかし、次の日(レポートの本数が多かったのとコピペ・チェックで、採点に2日かかりました)に、これは学生諸君の多くが参考文献の引用の仕方を含めたレポートの作成方法がわからないのだと理解したのです。

その理由は、コピペの個所の多いレポートの多くが1年生、2年生によるものだったからです。多分、これはまだゼミでレポートの書き方を習っていないためだと思います。

来学期は、レポートの課題を出す前に、レポート作成の方法論を講義しようと思います。

(学生諸君へ)最近の検索エンジンの発達により、コピー元の特定は容易になっています。最初から最後までコピペのレポートがどのような評価になるかは、想像がつきますよね。

2008年7月18日金曜日

2008年前期を終えて

ブログはもっと頻繁に書き込みしなければいけないですね。授業の準備と、研究、出張準備に追われて6月に一回書き込んだだけで、今に至ってしまいました。申し訳ないです。

開発経済論の授業はどうだったでしょうか?今学期は、成長理論、ガバナンス、援助を取り上げて授業をしました。経済学は日々進歩しているので、出来るだけ最新の議論を皆さんに紹介しようとしたのですが、理解できたでしょうか?

日々進歩しているということは、技術的に難しくなっていることも意味しますので、本当は大学院で勉強しないと、その面白いところはわからないかもしれません。しかし、学部の授業でも、できるだけそのエッセンスを学生諸君にわかるように伝えることが教員の腕の見せどころですよね。努力しましたが、その評価は皆さんにお任せします。

さて、6月にチュニジア、ガーナに出張をしました。様々な理由から学期中の出張となってしまい、皆さんには申し訳なかったです。どんな様子だったかは、HPにアップしましたので、ご興味があれば見てください。フィールド調査の紹介のところをクリックしてください。ガーナのクマシのビデオは結構面白いと思います。

2008年6月17日火曜日

Oxfam Japanの米良さんの講演会を終えて

ブログの更新も随分と間延びしてしまいましたが、昨日はオックスファム・ジャパンの米良さんをお招きして国際的NGOの活動についてお話を伺うことができたので、ここにその報告を行いたいと思います。

2008年は日本のNGOにとって、大変忙しい年であることはTICAD IVや洞爺湖サミットがあることでも予想できましたが、実際にどのような活動をされているのか、一般の国民にはわかりにくかったと思います。昨日のお話で、通常の援助活動のほかに、様々なロビー活動をなされていることがわかりました。

ロビーストというと、巨大企業の手先として政府や政治家に働きかける、という悪いイメージがありますが、その目的が良いものであれば、却って世の中のためになるわけですね。確かに政府や政治家の持っている情報も限られたものであり、NGOがより重要な情報を提供できるのであれば、積極的に提供してもらいたいものです。

授業の中でも述べましたが、Oxfamはそのリサーチ能力が高く評価されているNGOなので、有益な情報が提供されていることと思います。例えば『貧富・公正貿易・NGO―WTOに挑む国際NGOオックスファムの戦略』や『コーヒー危機―作られる貧困はとても優れた書籍だと思います(是非、皆さんも読んでみてください)。

願わくば、様々なチャンネルを通して有益な情報が、政府や政治家だけでなく我々一般の国民にも提供されるようになれば、と思います。しかし、いくら目の前に有益な情報がぶら下がっていても、その内容に国民の方が興味を持たなければ何も変わりませんね。

是非、皆さんも知的好奇心を持って自ら世の中のことを考えてみてください。

2008年5月15日木曜日

ソロー・モデルを勉強する意味②

GWで随分と間が空いてしまいましたが、5月13日にソロー・モデルの続きを紹介しました。皆さん、理解できたでしょうか?(そうだとよいのですが…)

ソロー・モデルは途中の展開で、随分と数式が出てきますが、最終的には単純な式とグラフで、驚くほど重要なインプリケーションをいくつも導くことができます。

そのなかでも、持続的な経済成長には技術革新が必要だ、というインプリケーションはすごく重いものですよね。日本も将来経済成長を続けていくためには、皆さんがそれぞれ働く分野で絶え間ない技術革新をしていかなければならないのです。技術革新は頭を使わなければならないので、皆さん、今からその準備をしておきましょう。

また、ソロー・モデルを面白いと思った人で、将来大学院で経済学を勉強したいと思う人がいたら、大学院での数学の応用は半端ではないので、心して今から勉強しておきましょう。

要するに、大学生諸君は頭を働かす訓練をしてかなければならない、ということですね。頑張りましょう。

2008年5月11日日曜日

NHK BS世界のドキュメンタリー<シリーズ アフリカ>について

皆さん、GWも終わり再び勉学の日々を送られていることと思います。さて、現在NHKの「BS世界のドキュメンタリー」で、<シリーズ アフリカ>をやっています。ご存知でしょうか?

5月5日から8日までは「アフリカ支援は甘くない(The Millionaires' Mission)」(2007年イギリスChannel4制作)という大変興味深い番組を放送していました。その内容は、ビジネスで成功したイギリスの人々が、ウガンダの田舎の村興しや公共サービスの改善を行うというものです。いくつかのプロジェクトは成功し、いくつかのプロジェクトは失敗しました。

この番組は援助の難しさを、具体例を持って我々に教えてくれています。いくら我々がよかれと思うプロジェクトでも、現地の人々がそのプロジェクトを自分たちのものとして実行しなければ、そのプロジェクトは成功しません。また、途上国の政府と関連したプロジェクトは、政府に資金がなかったり、政府の効率性が悪かったりして、予定した結果をもたらさないことが多いのです。

開発経済学の対象は途上国の経済です。日本のような先進国にいると、なかなか途上国のことはわかりません。この意味で、優れたドキュメンタリー番組を見ることは、開発経済学を勉強する際にとても役に立ちます。<シリーズ アフリカ>は5月16日まで続くようですから、是非ご覧になるとよいでしょう。

NHKのドキュメンタリー番組は、テーマの選択や内容で非常にクオリティが高いと思いますが、深夜にする番組が多いのは疑問です。優れたドキュメンタリー番組ほど若い人に見てもらいたいと思いますが、深夜ではなかなか彼らの視聴の対象にはならないのではないでしょうか?是非、NHKに再考してもらいたいものです。民放が放送できる番組は民放に任せるべきではないでしょうか?それでこそ公共放送ですよね。

2008年4月23日水曜日

ソロー・モデルを勉強する意味①

皆さん、4月22日の授業は理解できましたか?まだ途中ですが、随分と数式が出てきて、数式に慣れない学生さんには苦痛だったかもしれません。

しかし、前期の授業では、このセクションが一番数式がたくさん出てくるので、これを乗り越えれば、あとは楽になりますので、ご安心を。

最近のマクロ経済学の教科書をみると、成長理論の章のところでもソロー・モデルに触れずに全く数式が出てこない本もあります。しかし、近代経済学の醍醐味は複雑な現実を抽象化して、そのメカニズムを探るところにあるので、是非頑張って勉強してみてください。

私の大学院時代は、まさにこのソロー・モデルの結論が現実に妥当するのか、多くの学者が実際のデータを使って検証していた時代でした。皆の知的興奮が伝わるような一時期で、このような時に大学院生として勉強できたことは幸せなことだと思っています。

2008年4月15日火曜日

ハロッド=ドーマー・モデルとファイナンシャル・ギャップ・モデル

皆さん 今回の授業の内容はいかがだったでしょうか?よくわかりましたか?

今から20年ほど前に、私が日本輸出入銀行(現在の国際協力銀行)で、世界銀行のチリ向け構造調整融資(Sutructural Adjustment loan, SAL)との協調融資を担当した時に知ったのが、このファイナンシャル・ギャップ・モデルです。

いまから思えば、こんな単純なモデルで途上国への融資必要額が計算できるのか?と思いますが、当時は「経済学って使えるな」と単純に感心したものです。

イースタリーの本を読むと、未だに使っているようです。彼はそのことについて激しく批判しているので、ぜひ『エコノミスト 南の貧困と闘う』を読んでみてください。

2008年4月10日木曜日

援助供与国に援助するということ

2008年4月9日の日経新聞に「アフリカ諸国と経済協力を拡大 インド「サミット」開催」という記事がありました。内容はインド政府がニューデリーにアフリカ各国の首脳などを招き「サミット」を開催した、というものです。

その背景には、アフリカにおいて資源開発で先行する中国に対抗することがあるらしく、インドのシン首相は「サミット」の場で、アフリカへ今後5年間で54億ドルの信用供与を行うことを表明したらしいです。

中国が資源確保のためにアフリカへ経済協力を行っているのは最近ニュースでも良く見ますから、インドが同じことを考えるのもわからなくはありません。しかし、問題はインドも中国も日本の援助供与国としてトップ10に入る国だということです。

日経新聞の2007年10月11日「政界なんでもランキング ODA供与先、多様に」という記事で、OECDのデータをもとに外務省が作成した2005年の日本のODA供与先ランキングが出ていますが、中国は2位で、インドは10位です。

我々の税金をもとに日本が援助している国が、他の国に援助しているのは、エッ?っていう感じですよね。そんな他の国に援助するお金がある国に、日本が援助するのはおかしいだろう、っていうことです。

「ODA供与先」の記事に書いてありましたが、さすがに中国への新規円借款は2008年度から打ち切るそうです。日本政府はインドについてはどうするのでしょうか? 皆さんはどう思われますか?

2008年4月8日火曜日

第1回授業のまとめ

履修生の皆さん、本日第1回目の授業の復習をしたいと思います。今日はRoslingさんとUNDPが一緒に作ったHuman Development Trends 2005のソフトを使って、世界経済の現状について勉強しました。

授業中に全ての内容は紹介できなかったので、是非自分でもこのソフトを使って勉強してみてください。実際、このソフトは自分で操作した方が感動します。

今日授業でやった中で、皆さんに最低限憶えておいてもらいたいことは、以下の3点です。
①2000年の時点で地球上60億人中、12億人の人が1日1ドル以下で暮らしている。
②1975年時点ではアフリカよりも東アジアの方が貧しかった。
③途上国内の所得格差は激しくて、例えばナミビアではもっとも豊かな20%の人々は日本より少し劣る所得水準(実質一人当たりGDP23,000ドル)であるが、最も貧しい20%はシエラレオネとおなじ所得(同409ドル)である。

もちろん、これ以外にもいろいろ重要なことはありますので、ソフトを動かして自ら勉強してみてください。

また、ミレニアム開発目標は世界的な目標なので、グローバル化時代の若者として、その存在といくつかの内容については把握しておいてください。

2008年4月4日金曜日

ODAは金額が問題なのか?

本日(2008年4月4日)の日経朝刊に「ODA3割削減、5位転落」という記事が出ていました。OECDがまとめた数値(暫定ですが)によれば、日本の2007年の政府開発援助(ODA)実績が、先進国中5位に転落したとのことです。日本は1990年から2000年までODA実績世界1位であったことを考えると、ずいぶんと後退したわけです。

もっと深刻なのは、「貢献度指数」というODAの支出純額を国民総所得(GNI)で割った指標が0.17%となり、ギリシアより低い20位となっていることです。国連では2015年までに、この指標を0.7%とする目標を掲げています。先進国は、この目標を達成しようと努力しています。日本だけが、国内の財政赤字を理由に、この先進国グループの行動から別行動をとっているわけです。

日本も先進国の一員として、0.7%の目標は達成しなければいけないでしょう(そうでなければ、G8サミットやTICADで誰も日本の話を聞いてくれないと思います)。

しかし、それと同時に(それよりも)重要なのは、出している金額だけでなく、ODAの効果を正しく評価することだと思います。いま、経済学の研究分野では援助の効果について、否定的な結論をだす論文がいくつも公表されています。

個人的には、全ての援助が無効であったとは思いません。良い援助と悪い援助があったのだとおもいます。各国政府および研究者は、どのような援助が失敗する確率が高く、どのような援助は成功する確率が高いか、科学的に研究し報告する義務があると思います。私も微力ながら、努力するつもりです。

ODAは皆さんの税金から支払われています。是非、皆さんも考えてみてください。

2008年3月7日金曜日

世界長者の運用益は途上国の国民総所得より上?

日本経済新聞(2008年3月6日夕刊)に2008年の世界長者番付の記事が出ていました。今年は、ビル・ゲイツ氏ではなく、投資家のウォーレン・バフェット氏が一番になったそうです。

バフェット氏の資産は620億ドル(米フォーブス誌調べ)だそうです。投資家だから運用はお手の物でしょうから、10%で運用できたとすれば、この資産で追加的に年間62億ドルの富を生み出せることになります。

この62億ドルがどのくらいかといえば、カンボジアの2004年の国民総所得(GNI)が48億ドル(世界銀行のデータ)ですから、それよりも大きいです。ちなみにモンゴルのGNIは15億ドルです。

10%の運用は多分、そんなに無理な話ではないでしょうから、一国全体の付加価値生産量よりもずっと大きな価値を一人の人間が生み出せるということですね。資本主義のすごさを実感しますね。

2008年3月3日月曜日

アイルランドに学ぶもの

日本経済新聞(2008年3月1日付朝刊)の「世界を語る」という特集で、前アイルランド大統領メアリー・ロビンソン氏(女性)との対談が掲載されていました。アイルランドは1980年代まで欧州で最も貧しい国の一つでしたが、2006年の一人当たりGDP(出所OECD)では、日本が3万4千ドルなのに対し、アイルランドは5万1千ドルと大幅に上回っています。

この秘密をロビンソン前大統領に訊く、というのが記事の主旨で、前大統領が指摘した点はいくつかありますが、私が要約すると①官僚制度の改革、②インフラの整備、③教育の充実、の3点が重要だといっているようです。

アイルランドは、この3つのほかにも④積極的な外資の誘致や⑤大量の外国人受け入れ、も行っています。

アイルランドは英国によって植民地にされた経験もあり、多くの途上国にとって参考となる経験を持っています。アイルランドが援助の出し手として、自らの経験をどのように活かしているのか大変興味深いです。

2008年2月26日火曜日

G8サミットで日本に期待されているもの

今年の6月末から7月初めにかけて北海道洞爺湖でサミットが開かれますが、私たちが思っている以上にこのサミットは重要なものになるかもしれません。

2000年の沖縄サミットで、森首相が感染症対策を主要議題として取り上げ、その結果、2002年に世界基金(世界エイズ・結核・マラリア対策基金、Global Fund to FIght AIDS, Tuberculosis and Malaria)が設立されたことは有名です。日本が世界の開発問題に積極的な貢献をした1つの例だと思います。

今年のサミットでも、福田首相に開発の分野で大きな貢献が期待されていると考えるのは当然だと思います。日本は近年、財政赤字や国の債務を理由にODA予算を削減してきていますが、他の国にしてみれば、もうこれ以上は待てない、ODA予算を拡大してほしい、という気持ちがあるでしょう。

今や開発や貧困問題のactivistとなったU2のボノが作ったNGO(DATAという名前)のプレスリリースに、実際そのようなメッセージが載っています。ボノは福田首相とダボス会議で会ったそうですから、当然、日本の積極的な貢献への期待は福田首相に伝えられているでしょう。福田首相のイニシアチブに期待したいものです。
http://www.data.org/news/press_bonoJapanHeartWorldAffairs2008_012508.html




2008年2月14日木曜日

日本の援助は最低なのか?

米国ワシントンにあるCenter for Global Development(CGD)というシンクタンクでは、毎年先進国の援助の評価を行っています。この2007年の評価で日本は最低となっています。ちなみに最高はデンマークです。
http://www.cgdev.org/section/initiatives/_active/cdi/_components/aid/indicators/

日本の評価が低い理由として、経済規模に比べて援助の額が小さい(0.15%)、小さなプロジェクトが多いなどが挙げられています。評価できる点としては、ひも付き援助の比率が低い(8%)ことが指摘されています。

経済規模に比べて援助の額が小さいのはそのとおりで、北欧の国々は国民所得の1%程度を途上国への援助にあてています。

しかし、日本の援助プロジェクトの規模が小さいというのは、何か印象と違いますね。日本の援助というと、港湾施設や道路などのインフラが多い、という印象がありますから。

実は、CGDが評価のためのデータとして使用しているOECDのデータは、各先進国が自国の援助実績を報告したものをまとめているのですが、国によって援助プロジェクトの数え方(報告の仕方)が違うようなのです。

調べてみると日本の援助プロジェクトの最低額は10ドルです(2003年の実績)。1000円の援助って何よ?っていうことですよね。興味のある方は論文をご覧ください。

援助プロジェクトの数え方を先進国の間で統一するとともに、援助の評価方法の改善に向けて皆で取り組む必要があると思います。

2008年2月4日月曜日

資本主義と機会均等

今回のタイトルは、かなり大きなテーマなのでブログで取り上げるのは妥当でないと思いますが、考える第一歩ということでは良いのではないかと思います。

日本経済新聞の2008年1月30日、「私の履歴書 アラン・グリーンスパン」においてグリーンスパンは「資本主義が多量の富を生むのは間違いないが、公正に富が分配されていると人々が受け止めなければ、資本主義やそれを支える諸制度への支持は得られない。」と述べています。

この主張は「公正に富が分配されている」を、「公正に富を獲得する機会が与えられている」と換えたほうが良いと個人的には思います。グリーンスパン自身も本文の中で、公正な分配を実現する手段として教育を取り上げているので、「分配」という結果ではなく、「獲得する機会」のニュアンスで言っているのだと思います。

グリ-ンスパンの主張は、一国内でも地球全体の経済でも当てはまると思います。日本でも所得格差が問題になってきていますが、これは「親の所得」→「子供の教育」→「子供の所得」と世代間で所得格差が固定化してしまうことが問題なのだと思います。この固定化を是正するのは公教育の改善以外にないでしょう。

地球全体だと、もう少し問題は複雑で、途上国が富を獲得する手段は教育だけではなく、もう少しいろいろとあると思います。そうでなければ、何のための経済学か、ということにもなりますし。私自身は、教育に加えて、インフラ整備や幼稚産業保護は重要だと思います。この点に関しては、経済学者の中でも意見の分かれる点だと思いますが...

2008年1月25日金曜日

世界の労働者の43.5%は1日2ドル未満の稼ぎしかない!

国際労働機関(ILO)が1月23日に発表した『世界の雇用情勢2008年版』によれば、2007年に1日2ドル未満で生活する労働者は、世界全体で13億人だそうです。なんと世界全体の労働者の43.5%に相当するそうです。(この2ドルというのは、購買力平価を使用して各国の物価水準の差を考慮したものです)

地域別にみると、サブサハラ・アフリカでは労働者の8割以上が1日2ドル未満の稼ぎしかなく、東アジアでも、この10年間で随分とその比率は減ってきているが、それでも35.6%がそうだそうです。

しかし人数でみると、1日当たり2ドル未満の稼ぎしかない労働者が最も多くいいるのは南アジア(インド、パキスタンなど)地域で、約4億8千万人と推計されています。

日本では今年5月に、第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)が開かれることから、政府はアフリカに対する援助拡大を方針としているようですが、もし、人道的なものを援助の目的とするならば、南アジアの貧困についてもアフリカ以上に重要視する必要があるのではないでしょうか。

『世界の雇用情勢2008年版』については、以下のサイトから詳しい情報や英文の報告書が手に入ります。
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/new/index.htm#2

2008年1月22日火曜日

はじめまして

現在、来年度の授業の準備をしているところです。このブログが授業やゼミの内容を高めることが出来れば嬉しいなと思っています。

あと、武蔵大学の学生さん以外の方とも、開発経済学や経済発展論といわれている分野で何が問題になっていて、どこまで分かっているのか、など議論できたら幸いです。

経済学者は2人集まれば、3つセオリーができるといわれていますので、私の考えや認識がすべて正しいとは言えないですが(できるだけ真実を語りたいとは思っていますが)、この世の中に少しでも知的な貢献が出来ればHappyです。